非常に過激なタイトルの本です。タイトルだけを見ると、まるで相手を無理矢理拘束してヘッドホンで呪文を流し込んで判断力を奪ったり、人格否定セミナーで恐慌状態にしてモノを買わせる方法を解説しているような印象です。
もちろんですが、本書の内容はそのような相手に害を与えるような物ではありません。むしろ非常にソフトな、相手がそれと気づかない内に思考の方向を誘導する方法が解説されています。
この本を読むことで、相手の意見を無意識のうちに自分の望む方向に誘導するテクニックを知ることができます。日常のちょっとしたメールのやり取りの流れを望む方向に導いたり、交渉事においてあからさまになり過ぎずに自分の意見を通したりと、今まで自分の側がコントロール出来ないと思っていたことに対し、働きかける力を獲るのです。(もちろん、必ずうまく効果が出るわけではないてますが。)

「相手を洗脳する文章テクニック」の概要、入手方法
概要
「相手を洗脳する文章テクニック」に書かれているのは、文章や会話の中の言葉遣いによって、会話相手や文章の読み手の思考の方向をコントロールする方法です。タイトルに洗脳とありますが、一般的にイメージされる洗脳とは本書の内容は大きくかけ離れていると思います。本書の内容は、ライティングによって読んだ人の思考を誘導するテクニック集です。
例えば、飲食店などのトイレで「きれいに使ってください」と張り紙するより「きれいに使っていただきありがとうございます」と書く方が効果が高いという話は有名です。では、なぜこの書き方が効果的なのかを解説したのが本書です。
これを駆使する事で、
- 本来疑問を持つ可能性の高い文章を、受け入れ易く感じさせる(疑問を持たずに流してしまう)。
- 厳密には因果関係にない事柄を、つながりがあるかのように感じさせる。
- まだ決断をしていないのにも関わらず、決断することを前提で話すことで、決断した場合のイメージを持たせる。
といった効果を期待することができます。
相手の思考を誘導して、自分の望む方向に誘導することができるテクニックです。
誤解されがちな過激タイトル
本書に、「洗脳」と聞いてイメージするような内容は無いと思います。紹介されている文章テクニニックは、同じ内容の文章でも言い方を少し変えることで読んだ人に受け入れられ易くするといった、言ってしまえば地味なものです。
逆に、本当に「洗脳」について探していた人が本書を読んだ場合、拍子抜けしてしまうと思います。人目を引くための派手なタイトルなのかと思いますが、個人的にはもっと内容を直接表したものにしたほうがいいのではないかと思います。
さくっと読める分量で、整理され濃密な内容
非常に整理された構成になっている本です。5章+番外編の構成ですが、章の終わりごとに内容のまとめが記載されていますし、各章も冗長にならずに端的に書かれていると思います。さくっと読めますし、実際に本書のテクニックを使いたい時など、読み返す際の検索性も高いです。
基本情報
【著者】宮川昭
【ページ数)183ページ
【読み終えるまでの平均的な時間】2時間10分(Kindle上のデータ)
Amazonで入手可能
本書は紙、電子版ともにAmazonで入手できます。
Kindle版がおすすめ
紙の本にこだわりのない方は、Kindle版をお勧めします。場所を取らないし、単純に価格が安いです。時期によって価格が代わる可能性もありますが、基本的に紙の本2,000円、kindle版は600円です。
相手を洗脳する文章テクニック で学べること
総括 文章を読んだ相手の行動、思いを誘導する方法
本書において語られているテクニックは、人間が情報(文章)を解釈する際の不完全さを利用しています。そもそも文章自体のもつ情報量はとても少ないですが、それを読んだ読み手がその文章を「理解した」と思う時、様々な種類の情報の変質が起こっています。その変化を意図的に利用することができれば、相手の思考を望む方向に導くことも可能になるということです。
5章+番外編の構成
本書は5章+番外編で構成されています。それぞれで語られる項目は下記の通りです。(内容自体は記載していません。)
1章. 文章で相手を思いのままに操縦する
文章によって相手をコントロールする上での基本知識について。文章を相手のどの部分に働きかけるよう書けば受け入れられ易いのか。
2章. 文章で相手の心を開く方法
文章を読む相手に心を開かせ、その内容を受け入れ易い状態を作る方法。まずはこれで下地を作る事で、誘導が成功し易くなる。
3章. あなたの知らない潜在意識の世界
いよいよ具体的な文章テクニックの解説です。文章に命令を入れ込んで、かつ相手に反感を持たせずに命令に従うよう誘導する書き方が解説されています。
4章. 相手をトランスへ誘うテクニック
前章に引き続き、相手の思考を誘導するテクニックが紹介されています。人間の脳の習性を利用して、知らず知らずのうちに前提条件を受け入れさせてしまう言葉の使い方が学べます。
5章. 第5章 人を動かす物語のパワー
細かな言葉の使い方を解説していた前章までと異なり、伝えたい内容をストーリーの形することの効果について解説されています。また、相手の無意識に働きかけ易いストーリーの書き方も学ぶことができます。
番外編. 自分を成長させる「気づき」の技術
番外編では今までとは逆に、洗脳された自分を解き放つ方法が書かれています。相手を誘導する手法の裏返しをすることで、自分が情報を歪めて捉えていたことに気づきます。
こんな人も使っている! 「相手を洗脳する文章テクニック」
私はこの本の存在を、有名ブロガー/Yutuberのマナブさんのツイートで知りました。彼はブログの書き方についてのノウハウ情報を数多く発信していて、その中でのライティング力向上のための本として紹介されていました。
有名ブロガー マナブ氏が紹介
マナブさんも言われていますが、この本はタイトルで損していますよね。内容はライティングで読んだ人の思考を誘導するテクニック集なのに、タイトルのせいで胡散臭い印象を出してしまって居ます。
「相手を洗脳する文章テクニック 」を活かせる場面

日常会話
テクニックの一部は、口頭での会話においても使用できると思います。特に、論理的な繋がりを錯覚させたり、あいまいさを利用する手法は内容を反芻する時間のない会話において有効でしょう。
仕事(とくに営業)
いうまでもなく、本書の知識は仕事においても非常に役に立ちます。メールや書類の文章にこのテクニックを使うことで、
- 質問や交渉ごとで相手からYESを取りやすくなる
- 突っ込まれると痛い、内容の弱い部分の記述を受け入れさせる(つい突っ込まず流してしまう)よう仕向ける
といったことが可能です。特に営業の場合、商品を買おうか迷っている顧客を、購入を進める方に背中を押すようにして誘導することができます。
ブログや文章、コピーライト
これがこのテクニックの本領でしょう。商品の購入を促す文章ももちろんですが、読み手が文章を読んだ時の受け取り方を研究しているので、小説・物語を描く上でも役に立つ知識だと思います。
まとめ
「エンディングまで、泣くんじゃない。」
このキャッチコピーは、1989年に任天堂が発売した「MOTHER」というゲームのものです。名キャッチコピーとして有名で、これが効果的なことは感覚的に分かっている人は多いと思います。
ただ、このキャッチコピーに使われている効果を体系的に分析し、同様の手法を使って別のキャッチコピーを作り出すことまでは、なかなか難しいでしょう。
それを可能にするのが本書と言っていいかもしれません。実際、このキャッチコピーに使われているテクニックは本書で紹介されているもの(それを2つ二重がけで使っている)です。文章テクニックを知ることで、今まで自分に向けられていた文章・キャッチコピーの本来の目的-裏の顔を知ることができるはずです。
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